社会的養護施設第三者評価結果 検索

神奈川県立子ども自立生活支援センター

【1】第三者評価機関名 (特非)よこはま地域福祉研究センター
評価調査者研修修了番号 SK2021103
SK2021098
神機構-357


【2】種別 児童心理治療施設 定員 42名
施設長氏名 中野 美智子 所在地 神奈川県
URL https://www.pref.kanagawa.jp/docs/g2n/
開設年月日 2017年04月01日 経営法人・設置主体 神奈川県
職員数 常勤職員 62名 非常勤職員 33名
有資格職員 保育士 4名 医師 2名
栄養士 1名 看護師 5名
心理士 5名
施設設備の概要 (ア)居室数 個室38室 2人部屋 2室  合計40室 (イ)設備等 食堂、リビングルーム、多目的室、観察室など
(ウ) (エ)
【3】理念・基本方針 <基本理念>
子どもを権利の主体者と捉え、その権利を擁護することを基本に、次のことを大切にします。
(1)温かい生活を提供し、子どもの生きる力とつながる力を育みます。
(2)一人ひとりの子どもに寄り添い、最善の利益を優先した支援を行います。
(3)施設の専門機能を生かして地域に貢献します。

<基本方針>
(1)心理・医療等の専門的ケアの提供
保育看護・療育・治療等の支援を必要とする子どもに対して、その発達段階や障害特性などの課題に応じて、県立施設として心理・医療等の専門的なケアを行います。
(2)心身の健やかな成長と発達等の支援
子どもの人権を擁護し、その主体的な意思決定に配慮して、心身の健やかな成長と発達、自立と社会参加を目指した支援を行います。
(3)3つの施設の特色を生かした一体的運営
乳児院・福祉型障害児入所施設・児童心理治療施設の複合型施設として、それぞれの特色を生かした一体的な運営を展開します。
(4)多職種連携による支援体制の確立
豊かな人間性と専門性を持ち、常に支援の質の向上を目指す職種を超えた連携による支援体制を確立します。
(5)支援のネットワークの拠点としての働き
関係機関との連携を密にし、支援を必要とする子どもへの支援のネットワークの中で拠点としての役割を担います。
(6)地域に根ざした施設づくり
地域との交流を進めるとともに、関係機関への後方支援や人材育成を行い、地域に根ざした施設づくりを進めます。
【4】施設の特徴的な取組 神奈川県立子ども自立生活支援センター「きらり」は、乳児院「みらい」と福祉型障害児入所施設「ひばり」児童心理治療施設「ぎんが」の3つを一体的に運営する複合施設です。
施設の前身は、児童養護施設・乳児院「中里学園(昭和21年開設)」と障害児入所施設「ひばりが丘学園(昭和24年)」で、知的発達の障害や家庭・家族の問題、医療・心理的ケアなど
様々な課題を抱える子どもに対し、より専門的で総合的な支援を行うことを目的に、従来機能を統合・強化して2017年4月に開設されました。施設名の「きらり」は、「子どもたち一人ひとりがきらきらと輝き、個性豊かに成長できるよう、寄り添い支援する」ことがその所以となっています。
組織体制は、子ども第一課(乳児院)、子ども第二課(障害児施設)、子ども第三課(児童心理治療施設)のほか、心理職やソーシャルワーカー等の専門職が各課をバックアップする自立支援課、子どもの診療を行う医務課、管理課の6部門で構成されています。また、児童心理治療施設の子どもの通学先として、平塚市立金目小・中学校五領ヶ台分校も併設されています。分校の体育館は、地域のスポーツサークル等に貸し出しを行うとともに、災害時の一時避難場所としても機能しています。
県下の福祉行政の一翼を担う県立施設として、医療的ケア児や強度行動障害のほか、新型コロナ感染症により保護が必要な事例など、一般施設では対応困難なケースであっても、高度な専門性と長年の蓄積ノウハウを活かし、積極的な受け入れを行っています。
児童心理治療施設「ぎんが」では、心理・環境的要因により、家庭や学校等の社会生活に不適応を示す子どもたちを対象に、児童相談所の措置決定に基づき、入所による支援を行っています。建物は3階建てで、各階に2つずつユニットを設置し、1階「ムーン」は幼児から小学校の低学年の男児、2階「ア-ス」は小学3年~中学生までの男児、3階「ポラリス」は小中学生の女児が生活しています。
【5】第三者評価の受審状況 2022年07月29日(契約日)~ 2023年03月05日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 【特長】
◆「Charge&Challenge」をテーマに、子どもの健やかな成長・発達に寄り添う治療・支援を行っています
「ぎんが」では、施設の総合環境療法として、「Charge&Challenge」を職員間共通のテーマに掲げ、子どもが「心のエネルギーをチャージ(充電)」し、「現実に向き合い自分の課題にチャレンジ(挑戦)」していくことができるよう支援しています。
「子どものいるところに大人あり(No Staff, No Child)」の考え方のもと、日常場面を通じて常に子どもを見守り、寄り添う関わりに努めています。子ども全員を対象に担当職員と担当の心理職員を配置し、週一回の心理面接を実施するとともに、児童精神科医による診療や各種療法士によるセラピー等の心理治療も実施して、子どもの心を癒し、自己回復力を高める支援を行っています。
施設独自の「生活支援ガイドライン」を策定・活用し、職員間の理解浸透と認識の共有化、対応の一貫化を図るとともに、生活場面を通じて子どもの特長を見出し、個性を伸ばす支援を実践しています。
また、子ども同士の話し合いの場を随時設定し、生活ルールや施設行事等に子どもの意見・要望が充分反映されるようサポートするなど、子どもの自尊心や主体性を高める関わりとともに、集団活動を通じて、一人ひとりがかけがえのない存在であること、お互いを尊重し合う協調性の大切さなどについても繰り返し説明し、自律心や責任感を育む関わりも行っています。

◆センター全体が一丸となって、子どもの権利擁護の推進に取り組んでいます
センターでは、「子どもを権利の主体者と捉え、その権利を擁護する」ことを基本理念に掲げ、子どもの権利擁護を推進するとともに、子どもが各々の権利を正しく理解し、自尊心や自己肯定感を高めることで、社会生活に順応し自立(自律)できるよう支援を行っています。
センターとして「人権擁護委員会」を設置し、子どもの権利擁護を組織的に検討する体制を整備するとともに、年間運営計画の重点目標の一つに「人権意識と支援スキルの向上」を掲げ、人権研修の実施や第三者委員の積極的な活用、オンブズパーソンの導入、実習生に対する「子どもへの対応に関する聴き取り調査」の実施など、権利擁護の浸透・定着に向けた多層的な取り組みを推進しています。職員に対しては、施設独自の倫理綱領を策定し、意識付けと実践を促すとともに、全職員を対象に毎月定例で「日常点検チェック」を実施して、権利侵害防止のための振り返りを行う機会を設けています。
子ども全員に対し、入所のしおりをはじめ施設独自に作成した「えがおのやくそく」や「いけんばこについて」等の冊子を配布し、各々の尊厳や権利が守られること、意見を自由に表明できることなどを丁寧に説明しています。年に一度「人権集会」を開催し、職員と子どもが一緒に人権や権利擁護について話し合うほか、子どもから直接不適切な対応がないか聴き取り調査を行う「安全ヒアリング」の取り組みなど、子ども・職員が一体となり、権利擁護の意識浸透・実践に尽力しています。

◆より多面的で客観的な視点を反映した、自立支援計画を策定する仕組みを構築しています
「ぎんが」では、子どもの状態に合わせて自立支援計画を策定し、各々の発達段階に応じた心理的ケアや生活課題の改善等に向けた支援を行っています。計画の策定にあたっては、児童指導員や担当の心理職員をはじめ、児童精神科医や各種療法士、看護師・栄養士等の専門的な意見を反映し、子どもの個別性の尊重とともに、特長を伸ばすための支援に配慮するほか、管轄の児童相談所や学校、保護者の意見等も踏まえて支援方針を決定しています。
また、子ども全員の自立支援計画を対象に、所長・部長をはじめ、教育担当部長、各課の管理職が一堂に会する支援計画の策定会議を開催し、支援計画の内容をより客観的・多面的な視点から、組織全体で検討する仕組みを構築しています。策定会議では、担当者が支援計画の内容をプレゼンテーションし、計画策定の根拠や想定される効果等を説明するほか、医療・心理面や心身の成長発達、権利擁護、家庭支援など参加者それぞれの専門的視点から意見交換を行っています。
策定会議の取り組みを通じて、3施設それぞれの特長や各々に所属する職員の豊富な経験等を活かし、自立支援計画の内容充実化を図るとともに、協議を通じて職員同士の資質向上につながるなど、様々な相乗効果を生んでいます。

【今後期待される点】
◆センター理念の実践と、子ども一人ひとりの地域生活移行に向けた、さらなる取り組みが期待されます
「ぎんが」では、「総合環境療法(施設全体が治療の場で、施設内で行う全ての活動が治療となる)」の立場から、様々な支援を通じて子どもの健全な成長・発達を促す関わりに努めるほか、地域生活への移行に備え、地元NPO団体との交流を通じた農作物の収穫体験や公民館の学習支援、地域の清掃活動への参加など、幅広い社会体験の機会を確保し、子どもが豊かな人間性を育み、成長していくための支援に尽力しています。一方で、心理治療を要する子どもの行動特性やコロナ禍に伴う外部交流の制限など、子どもの治療と安全を優先するために、目的をもって外出する場合を除いて、ほぼ施設内で生活が完結するように治療的環境を組み立てています。また、子どもが自ら考え、行動できるよう、より主体性を高めるための取り組みや、アフターケアを含む保護者・家族等に対する支援体制の構築は今後の課題となっています。
センターの基本理念「子どもを権利の主体者と捉え、その権利を擁護する」との視点に立ち、子どもの自立(自律)と地域生活への移行に向けた、さらなる取り組みが期待されます。

◆子どもの成長・発達と自立をサポートする専門施設として、さらなる性教育の内容充実化が期待されます
施設では、様々な事情から入所に至った子どもに対し、センター内外の専門職が緊密に連携して「こころ」と「からだ」を癒すとともに、各々の課題に向き合いながら自立していくことができるよう、多様な支援を行っています。
思春期の子どもが多く在籍し、性的問題行動や虐待体験など、より配慮を要する子どもに対し、個別の状況に応じた性教育を実施するほか、2021年度からは性教育プロジェクトを始動し、生理前の女子児童を対象に性教育を行っています。今後は、性に関する基本姿勢や支援方針を明確化するとともに、子ども一人ひとりが自尊心や自己肯定感を高め、自他ともに大切にできる思いを育むことができるよう、さらなる性教育の内容充実化に向けた継続的な取り組みの推進に期待します。

◆「子どもの自立を一体的に支援する複合施設」として、センター内のさらなる連携推進と機能の共有化を図る取り組みが期待されます
センターは、全国的にも希少な、乳児院と福祉型障害児入所施設、児童心理治療施設の3つを一体的に運営する複合施設として、「障害や年齢に応じた専門的で切れ目のない支援」の実践を目指した、様々な取り組みを行っています。また、神奈川県の児童福祉推進の一端をなす公立施設として、関係機関との連携及び地域との交流推進、児童・障害児福祉の普及啓発と情報発信、防災機能の提供など、他施設の鏡鑑となる事業展開を進めています。
一方、各施設それぞれの子どもの特性の違いなどから、医療的対応や子どもの権利擁護、地域交流など、施設ごとの取り組み状況に相違が見られています。今後は、各施設間のさらなる連携強化と知識・技術等の共有化促進など、相乗効果を発揮して相互に機能を補完し、専門性向上を図る取り組みに期待します。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  当センターは、乳児院と障害児入所施設、児童心理治療施設を併設し、一体的に運営する複合型の施設です。開所からの5年間、(1)温かい生活を提供し、子どもの「生きる力」と「つながる力」を育みます、(2)一人ひとりの子どもに寄り添い、最善の利益を優先した支援を行います、(3)施設の専門機能を生かして地域に貢献します、この3つを基本理念に施設を運営してまいりました。
第三者評価の受審は、これまでの取組みを振り返る貴重な機会となりました。ご指摘いただいた点については、しっかりと受け止め、今後の施設運営に活かしていきたいと考えております。
 児童心理治療施設については、日々の支援において、ガイドラインに沿って子どもの自尊心や主体性を高める関わりとともに、集団活動を通じて、一人ひとりがかけがえのない存在であること、お互いを尊重し合う協調性の大切さなど、自律心や責任感を育む関わりが行われていると評価していただき、職員一同、励みになりました。
 一方で、子どもが自ら考え、行動できるよう、より主体性を高めるための取り組みや、アフターケアを含む保護者・家族等に対する支援体制の構築について、さらなる向上が求められており、このご指摘を真摯に受け止め、取組みをより一層進めてまいります。
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