社会的養護施設第三者評価結果 検索

クローバー学園

【1】第三者評価機関名 (株)IMSジャパン
評価調査者研修修了番号 SK2021091
SK2021090



【2】種別 児童養護施設 定員 35名
施設長氏名 小林 絹恵 所在地 山梨県
URL https://jidouyougo-clovergakuen.net/
開設年月日 1957年05月01日 経営法人・設置主体 社会福祉法人光塩福祉会
職員数 常勤職員 26名 非常勤職員 10名
有資格職員 社会福祉士 3名 保育士 15名
児童指導員 5名 管理栄養士 1名
公認心理師 1名
施設設備の概要 (ア)居室数 本園:子ども5名×2グループ、6名×1グループ 分園:子ども6名×1グループ、5名×1グループ 計5グループ (イ)設備等 本園:各グループに、リビング、キッチン、トイレ、風呂、居室(主に1人部屋)、指導員室 分園①:リビング、奥座敷、キッチン、トイレ、風呂、居室(主に1人部屋)、指導員室 分園②:リビング、キッチン、トイレ、風呂、居室(1人部屋)、指導員室
(ウ) 本園:園長室、事務室、医務室、面会室、会議研修用プレイルーム、食品庫、親子訓練室、洗濯室、実習室、多目的室、心理室、書類室、貯水室 (エ) 本園:園庭 分園①:庭、車庫 分園②:ベランダ、ウッドデッキ
【3】理念・基本方針 「愛育」の精神を大切にし、職員一人ひとりが「当園のあるべき姿」をめざし、日々の実践に努める。

■基本方針
(1) 子どもを権利の主体者としてとらえ、その最善の利益を追求し、家庭の代替機能として安心、安全な場を提供するように努める。
(2) 子どもたちのくらしのあらゆる場面を子どもとの関係性を育むためのツールとして愛着の再形成、関係性修復のための支援をおこなう。
(3) 将来、自立した個人として等しく健やかに成長することができるよう、子どもの発達段階に応じて、切れ目のない学習機会を提供する。
(4) 他の関係機関と連携し、子どもに関する地域支援の拠点として地域に必要とされる施設を目指す。
【4】施設の特徴的な取組  近年、不適切な養育を受けたために、愛着に困難さを抱える子ども、被虐体験をもつ子ども、里親不調を起こし分離体験を経験した子ども等の施設入所が多くを占めるようになってきている。当園では、2011年度の新園舎への移行当初より、全グループ共通の重点テーマとして、“『食』を軸にした子どもとの関係性づくり”を掲げ、大人との信頼関係の回復と再構築を図ることを目的に養育支援に努めている。
 令和5年度は、子どもと直接かかわる職員が掲げる食以外の重点目標として、学習支援と性(生)教育の2点を挙げている。学習支援については、外部の大学生ボランティアに協力していただき、個別的に学習を見てもらう機会を通じて、単に学力向上を目指すだけではなく、大学を身近に感じてもらえるようにしている。性(生)教育については、長年十分な支援が行えず当園の大きな課題としてきたが、令和5年度より性(生)教育委員会を立ち上げ、大学講師にアドバイスをもらいながら、子どもたちにどのように性の支援を行うべきか委員会内で検討しているところである。
 令和4年度より、専門職として自立支援担当職員と里親支援専門相談員をそれぞれ配置した。自立支援に関して専任職員を設けることで、退園を目前に控えた子どもを、希望する県外の大学キャンパスに引率するなど、より丁寧な支援を行うことができるようになった。また、退園生に対しては、従来から食料等を直接届ける支援を実施したり、お盆に呼びかけて「退園生の集い(お盆交流会)」を開催したりしている。退園後も関係性を切らさないように、1年のうちに退園生に何度か連絡をする「何気ないかかわり」を継続し、気軽に相談ができる体制づくりに努めている。里親支援に関しては、近隣エリアの里親家庭を訪問し、里子や養育に関しての相談を受けたり、里親交流会を実施した。
 令和3年度より、近隣2市と子育て短期支援事業の契約を締結し、特に育児疲れなどで子育てにお困りのシングルマザー家庭等の支援を行っている。
 令和3年度より、子どもが日々生活する中でよりその希望や要望を汲み取れるように利用者アンケートを開始した。アンケート結果については全て子どもたちに開示し、実現可能な内容については園内で協議し導入や採用をするようにしている。
 2020年度より1カ所、2023年度より2ヶ所目の分園型小規模グループケアを開所した。2016年児童福祉法改正、2017年社会的養育ビジョン発出により、家庭養育優先原則が提示され、当園でもより家庭的な養育環境を用意するよう努めている。
【5】第三者評価の受審状況 2023年06月02日(契約日)~ 2024年01月30日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和2年度
【6】総評 【特に評価できる点】

[1]利用者や他者からの指摘等を聞き流すことなく、改善に向けて真摯に取り組んでいる姿勢は高く評価されます
 
 利用者の声や第三者評価等から自分たちの課題を見い出し、改善に向けて真摯に活動していると強く感じられます。例えば、利用者の意向については、毎年独自に「子どもアンケート」を実施していて、そこから集めた意見一つ一つについて真剣に検討しています。子どもたちには、対応できること・できないことについて回答していて、誠実に対応していると感じられます。
 第三者評価結果を基にした改善にも取り組んでいて、その進捗状況について職員会議で議題にするなどしています。改善した具体的な例を出すと、早速ホームページを整備して採用に生かしていますし、子どもの性教育についても外部専門家を招いて指導を仰ぐなどしています。社会資源リストも独自の工夫を加えたものを作っていました。重点目標の達成度合いの評価方法についても、他施設のやり方をさまざまに調べ、調査結果を職員会議で披露しながら、自分たちのやり方を探るなどしています。


[2] 施設独自の権利ノートの改訂や子どもへのアンケート、事例集の作成など、権利擁護の取り組みを継続しながら発展させています

 子どもの権利を擁護する取り組みを、継続しながら発展させています。全29ページの権利ノートを施設独自に作成し、年3回子どもたちに継続的に伝え続けています。その内容は、子どもの気持ちに寄り添うもので、例えば「どうしてここに来たの」「いつまでここにいて、いつ帰れるの」など、柔らかい言葉を用いて子どもたちに語りかけています。今年度権利ノートを改訂して、大学や専門学校などへ入学するときは18歳を過ぎても園から通うことができるという内容を追加しました。今後は性に関する内容も含めていきたいとしており、他の施設の手本になるような取り組みと評価されます。
 さらに、グループ会議で対応に悩んだケースのエピソードを毎月集め、「不適切対応防止のための手引き」を継続的に更新することや、定期的に子どもにアンケートを行って子どもの意向を確認し、子どもの権利擁護に関する取り組みを進めています。


[3] 退園生との「何気ない時の関わり」に着目し、施設全体で退園生との程よい関係を築けるように取り組んでいます

 施設では、意図した退園生の支援から何気ない関わりまで、人・時を見極めた継続的な退園生への支援を提供したいとし、イベント一辺倒ではない個別的なつながりを作るよう取り組んでいます。「何気ない時の関わり」を年3回はすることにし、声を聞くために電話をかけたり、退園生の好きな料理や手土産を持って会いに行ったりするなど温かなつながりを保っています。退園時の担当職員と自立支援担当職員が協力し合いながら、退園生の状況に合わせて程よい距離感で関わっています。また、「誕生日号外」という退園生の誕生日を祝うA3サイズの特大カードを、当時の写真とメッセージを添えて贈っています。退園してから間もない方から、退園後30年ほど経過する方まで、連絡が取れる退園者に向けて作成しています。その誕生日号外を自分の子どもに見せて懐かしむ退園生もいるようで、退園生の会には、自分の家族を連れて来園する様子が見られます。


【今後の課題と思われる点】

[1]各現場・各職種からの代表を集め、できる限りさまざまな角度からの知見を基に、「当園のあるべき姿」の見直しを進めて行くとよいように考えます 

 当施設の理念には「職員一人ひとりが『当園のあるべき姿』をめざし日々の実践に努める」とあり、その実現のため「当園のあるべき姿」という正にそのままの名称の基本マニュアルがあります。この「当園のあるべき姿」は、新任職員の研修でも、2~3年目職員の研修でも活用していますし、養育・支援についての標準的な実施方法を明確にしているため現場においても手順を確認するのに必要なものとなっています。しかし、現場からは、現状にそぐわないのではないかといった声も聞かれていて、その見直しが必要となってきているようです。確かに、「当園のあるべき姿」は制定から相当の年月が経っていて、その後社会も各種技術も進歩していますし、コロナ禍という社会的な大変革を経験した現在では、妥当ではない部分も存在するかと思われます。
 そこで、各現場・各職種からの代表を集め、できる限りさまざまな角度からの知見を基に、見直しを進めて行くとよいように考えます。改訂する場合には、後々のため、制定日や改訂日、改訂した箇所等が分かるように記録しておくことが大切です。また、全職員への理解・浸透をしっかり、丁寧に行っていくことも肝要でしょう。


[2] 効果的なアセスメントを検討し、ケアニーズに応じたより専門的な援助につなげていくことが期待されます

 自立支援計画は、子どもや保護者、学校、児童相談所、家庭支援専門相談員、心理職、施設長から意見を集め作成しています。各グループ内で丁寧に話し合っていますが、多職種との部門横断的な協議や、発達や自立度などの指標に基づくアセスメントについては課題となっています。また、子どもの課題に着目した自立支援計画になりやすい傾向が見られるため、強みや長所にも着目できるよう意識的にアセスメントをしていくことも必要だと思われます。ケアニーズの高い子どももいることから、トラウマに関するアセスメントなどから、子どもの背景をさらに理解し、組織として専門的な援助につなげていくことが期待されます。


[3] 階層ごとに何を経験し、どのような能力を身につけておくとよいか、目安(標準)を提示してあげるとよいように思われます

 人材育成には力を入れていて、研修の仕組みを整備し年間計画を作って進めています。「研修体系」も整備し、経験年数を基にした階層ごとにどのような研修を受けるかを規定して各人に参加を促しています。当施設のバイブルとも言える「当園のあるべき姿」には、「最善の支援者になる為に」の章の中に職員に「求められるあり方」を示していて、他の章でも子どもに対してどのような対応をすべきかを明確にしています。
 しかし、この中に示されたことを最初から全てできる人はいないため、経験を積みながら順を追って身につけていくことになると思われます。例えば、段階ごとに何を経験し、どのような能力を身につけておくとよいか、目安を提示してあげるとよいように思われます。この目安(標準)があることで、各職員は自分の成長度合いを確認して安心することができますし、目指すべきものを見据えることもできます。施設長面接の際に行う目標設定にも有効に働くでしょう。
【7】第三者評価結果に対する施設のコメント  過去2回と同様、事前の利用者、職員アンケートから始まり、訪問調査においても丁寧なヒアリングと、それを受けて当園の現状について詳細な分析と評価をしていただきました。当園としても、この3年の中で専門職を増員し、これまで以上に入所児童への支援、また退園生に向けての支援に力を注いでまいりました。そのような点を評価いただき、職員全員の励みとなりました。また一方で、当園が抱える従来からの大きな課題、また、社会的養護の大きな変化を背にした新たな課題についてご提示いただき、より一層取り組むべき課題が明確になりました。ご指摘いただいた点については、運営層を中心に全職員で協議し、子どもたちのより良い支援につながるように努めてまいりたいと考えております。1年間ありがとうございました。
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