社会的養護施設第三者評価結果

札幌育児園

データ登録日 2026年02月12日
【1】第三者評価機関名 (株)IMSジャパン
評価調査者研修修了番号 SK2024091
SK2024089



【2】種別 児童養護施設 定員 24名
施設長氏名 千葉 徹 所在地 北海道
URL http://www.ikujien.jp
開設年月日 1906年01月15日 経営法人・設置主体 社会福祉法人札幌育児園
職員数 常勤職員 26名 非常勤職員 2名
有資格職員 社会福祉士 8名 保育士 15名
臨床心理士 1名 公認心理師 1名
栄養士 1名 調理師 4名
施設設備の概要 (ア)居室数 4棟 (イ)設備等 各棟にリビング、ダイニング、キッチン、トイレ2カ所、風呂、個室6部屋、保母室
(ウ) 本館に事務室、応接室、心理療法室、多目的ホール、集会出、ミーティングルーム、体育館、風呂、来賓トイレ、バリアフリートイレ (エ) 本館に、中庭
【3】理念・基本方針 児童養護施設札幌育児園は、すべての子どもを社会全体で育み、子どもの最善の利益を求めることを理念に、①子どもの生きる権利、生活する権利、発達する権利、教育を受ける権利を保障し、子どもの健全な成長、発達を支援すること。また、親子関係の調整や、家庭環境の改善などソーシャルワークを展開し、子どもの自立を支援すること。さらに、②地域の子どもの福祉や、地域の福祉に関する支援を行い、地域の福祉向上に努めていくものとする。
【4】施設の特徴的な取組

1992年より北海道内の全養護施設の職員が結集し、「北海道養護施設ケア基準」の策定に取り組み、1994年よりケア基準をスタートした。また、1995年に不服申立制度導入と第三者による審査委員会を設置する等、子どもの権利養護への取り組みをいち早く行ってきた。

1987年に法人独自の奨学金制度を設立し、措置費で賄えない、自動車免許の取得費用、大学、短大、専門学校の進学費用、自立のための一人暮らしの費用(アパートの契約費用、家具・家電の購入費、1ヶ月分の生活費等)を全額給付し、子どもの自立を支えている。

【5】第三者評価の受審状況 2025年05月07日(契約日)~ 2026年02月04日(評価結果確定日)
前回の受審時期 令和4年度
【6】総評

【特に評価できる点】

[1] 当施設には「職員心得」というバイブルがあり、運営・養育の両面において正しい判断や行動を行うための指針となっています
 
 当施設には、「職員心得」というバイブルとも言える文書があり、毎年更新しています。「職員心得」では、児童養護施設における援助は、基本的人権と子どもとしての権利を保障・擁護することであり、それを行う道具が専門性であることをうたい、どのような場面でどのような専門性が必要かを説いています。その他に、子どもの安心・安全性が大切であることや、明るくきれいで穏やかな生活環境が養育の場として望ましいことなどをうたっています。
 「職員心得」は、こうした基本的な考え方や方針に関わることだけではなく、実務的なことにも及んでいます。例えば個人情報保護の具体的方法や車の運転に関する事項、職員同士の呼び合い方、地域との関わり方など多岐にわたっています。いわばルールブックの役割も果たしていると言ってよいでしょう。
 施設では、年度初めの職員会議後に実施する最初の研修において、必ず施設長から「職員心得」の説明を行っています。それほど、この「職員心得」を大切にしていて、施設の運営面・養育面の両面において正しい判断や行動を導く指針となっています。


[2] 援助の基本をレジデンシャルソーシャルワークと位置づけ、理論に基づいた専門的な養育支援を実践しています

 当施設では、援助の基本をレジデンシャルソーシャルワークと明確に位置づけ、理論に裏付けられた専門的な支援を一貫して実践しています。施設長は自ら講師を務めて継続的に研修を実施し、職員全体の専門性の向上を図っています。日常の中のすべての支援や実践は、子ども一人ひとりの個別援助計画に基づく課題解決へと結びつけられています。子ども同士の相互作用、職員と子どもの関わり、生活環境の設定に至るまで明確なねらいがあり、子ども個々の目標を踏まえた体系的な支援を展開しています。
 さらに、小集団・大集団といった多様な集団活動を効果的に利用し、グループダイナミクスを生かした養育を実施している点も、当施設の大きな強みといえます。各生活単位で行う子どものグループ集会は、子ども個々についてリーダーシップや協調性などの「見えない目標」を設定した上で実施し、子ども同士の相互作用を通じて、それぞれの力を引き出せるよう職員が働きかけながら、「見える目標」である生活ルールなどの検討を行っています。全体行事であるサマーキャンプは、グループワークを援用した援助の機会であるという共通認識のもと、行事を通して各子どもの課題解決を図る機会としています。当施設ならではの専門性の高い実践は、子どもの自立に向けた成長を促すとともに、子どもの生活に対する満足度の高さにもつながっていると考えられます。


[3] 地域全体の福祉向上に努めていくという考えから、子どもの福祉に限らず高齢者への支援にも取り組んでいます

 当施設では、基本方針を「自立支援」と「地域支援」の2つに大別しており、その1つを占めるほど、地域支援を重視しています。地域支援では、子どもの福祉に限らず、地域全体の福祉向上に努めていくという姿勢をとっています。施設が立地する地域は高齢化が進んでいるため、子どもの福祉以上に高齢者のニーズの存在が大きく、その対応も行っています。
 子どもの福祉では、ショートステイ事業を行って子育て家庭のレスパイトケアなどに貢献しているほか、同じ建物内にある児童家庭支援センターを通じて地域の子育て家庭からの電話相談や訪問支援、通所指導等を手掛けています。また、広範囲に点在している子育て家庭の孤立を防ぐため、子育て広場の開催や時間単位の子育て支援等の事業も行っています。
 一方、高齢者を対象とした支援では、買い物支援を月2回実施したり、高齢者サークルを開くなどしています。高齢者サークルでは、モルックやカーリンコン等の活動を施設の子どもたちと交流をしながら行い、サロン的な交流の場を提供しています。
 今回実施した職員アンケート(自由記述式)では、大半の職員が地域との交流や貢献を施設の良い点にあげていました。


【今後の課題と思われる点】

[1] 入所時に子どもに渡せるようなしおりを作成して、より一層子どもの不安軽減を図り、これからの生活に見通しを持てるように取り組むことが期待されます
 
 入所にあたっては担当職員が一時保護所等を訪問し、インテーク面接を実施しており、ケースによってはユニットリーダーも同席するなど、丁寧な受け入れ対応が行われています。面接時にはパンフレットを用いて施設の写真を見せながら生活の様子や日課を伝えるとともに、好きな食べ物や遊び、不安なことや楽しみにしていることなどを確認し、子どもの思いを把握できるよう取り組んでいます。
 今後は、入所時に子どもに手渡すことができる「子ども用のしおり」を作成・活用することで、子どもの不安軽減をさらに図ることが期待されます。例えば、安心・安全が守られることやプライバシーへの配慮、施設での行事や活動、食事の工夫、通学予定の学校、小遣い、ゲームやスマートフォンの取り扱い、進学・就職や資格取得への支援、家族との関係、困ったときの相談方法などを具体的に示すことで、さらに子ども自身がこれからの生活に見通しを持てることと考えられます。また、現在生活している子どもたちの意見を取り入れ、入所前に不安だったことや知っておくと安心できたことを反映させながら作成することや、積極的に写真や映像を活用して伝えていくことも、子どもの安心感を高める有効な方法といえます。


[2] 直接対面で意見を伝えることが難しい子どもへの配慮から、意見を表明できる手段の一つとして、意見箱の再設置を検討することが期待されます

 子どもの意見・要望・苦情等は倫理委員会の委員が毎月1回聞き取るようにしており、男子ユニットは職員と一対一で、女子ユニットはグループの聞き取りも取り入れるなど柔軟な方法で対応しています。その他に、子どもたちによるグループ集会を原則として毎月実施するとともに、各グループの代表の子どもたちによるグループ代表者会議や、子どもアドボケイトを通して意見を言える機会を設けています。
 丁寧に取り組んでいますが、常時投函できる意見箱は設置されていません。過去にトラブルがあったことから廃止に至った経緯があります。その経緯については理解できますが、直接対面で意見を伝えることが難しい子どももいることや、意見箱にはいつでも好きな時に出せること、匿名性を保てるといった利点もあり、意見を表明できる手段の一つとして意見箱の在り方を検討していくと良いでしょう。各グループ(ユニット)への設置が難しければ、例えば本館玄関に1カ所設置するなどの方法も考えられます。箱の材質や開閉性、設置場所等についても、過去の事例を教訓に工夫することで対応が可能と考えられます。子どもが意見を出しやすい経路・手段を複数確保していくことが期待されます。


[3] 新人職員の育成においてOJTチェックリストを導入することで、より効果的な仕組みになると思われます

 新人職員の育成については、「新人は一人にはしない」ということを基本に、先輩職員と勤務時間が重なるようにして指導の機会を確保するとともに、先輩職員が新人職員の話をよく聞くようにしています。指導員役を固定せず、勤務が一緒になった先輩職員が、気になった点をその場で指導します。その際にはケアマニュアルに沿った指導を心がけているとのことです。新人職員が不安なく業務の習得に専念できる方法といえますが、現行の方法では、指導内容や習得状況がグループ内で共有されにくい可能性もあります。
 例えば、入職後1週間で覚えること、1カ月で習得すること、3カ月目までにここまで到達してほしいことをチェックリストに整理し、それをもとに先輩職員が指導することで、指導内容の漏れがなくなり指導すべき時期も明確になります。また、完全に一人で実施できるかどうかを判定する欄も設けることで、習得度を確認でき、再指導の必要性も判断しやすくなります。新人職員自身にとっても、自身の成長を確認できるツールとなるため、導入を検討すると良いと思われます。

【7】第三者評価結果に対する施設のコメント 丁寧に評価いただき誠にありがとうございます。明らかになった課題に取り組み、より一層のサービスの質の向上に努めていきたいと思います。ありがとうございました。